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竹フローリングを深く知るための総合ガイド

竹を素材としたフローリングは、近年ますます注目されています。硬度の高さや軽やかな質感、安定した寸法特性など、住宅用から商業空間まで幅広く採用が進んでいます。製造現場で技術に関わる立場として、竹フローリングの特性を正しく理解してもらえるよう、種類や色味、サイズ、施工方法、メンテナンス、製造の流れまで一通り整理しながら、落ち着いた自然素材としての魅力を伝えていきます。専門的な要素が多い素材ですが、実際には扱いやすく、適切な知識があれば長期にわたり安定した美しさを保つことができます。

竹フローリングの主要な種類
竹材は加工方法によって性質が大きく変わります。以下は現場で扱われる代表的な構造です。

横積み(ホリゾンタルタイプ)
竹の外皮側がそのまま表情として現れ、竹らしい節模様がしっかり出る構造。柔らかい印象の見た目から、自然な表情を求める住宅で多く採用されます。

縦積み(バーティカルタイプ)
細かく割いた竹片を縦方向に積層したもの。節が控えめで、均一な木目に近い見た目となり、モダンな空間に使いやすいタイプです。

ストランドウーブン(圧縮竹)
竹繊維を細かく砕き、高圧で圧縮成形した高密度タイプ。強度が非常に高く、一般的な広葉樹より表面硬度が上回る場合もあります。商業施設や高い耐久性が求められる空間で特に支持されています。

エンジニアード竹フローリング
合板の表面に竹材を貼り合わせた構造。湿度変化に対して安定しやすく、床暖房対応の製品が多い点が特徴です。

それぞれの構造の特性を把握すると、空間用途に応じた選択がしやすくなります。

色のバリエーション
竹材は自然色のままでも魅力的ですが、熱処理や表面加工によって色の幅が大きく広がります。

ナチュラル
淡いベージュ系の自然色で、光を反射しやすく空間を明るく見せます。素材の素直な色味を楽しみたい場合に適しています。

カーボン(ブラウン系)
高温蒸熱処理により色を深くしたタイプ。落ち着いたトーンで家具や内装に合わせやすいほか、ストランドウーブンと相性の良い濃色として幅広く使われます。

グレイッシュ・ブラック系
着色仕上げや表面のブラッシング加工により得られる色味。近年のインテリア傾向に合わせて需要が高まっており、竹材特有の線状繊維が陰影を作り出します。

色の変化は加工方法だけでなく、光の当たり方や環境によっても徐々に変わるため、経年の表情変化も魅力の一つになります。

サイズの選択肢
竹フローリングは加工しやすいため、サイズ展開が豊富です。

・標準的な幅:90〜130mm
・ワイドタイプ:140〜190mm
・長さ:920mm前後から、1820mmのロングサイズまで
・厚み:10〜15mmが一般的、ストランドウーブンは14〜15mmが主流

幅が広いものほど存在感が増し、空間にゆとりを感じさせます。一方で気候変化の影響を考えると、使用環境を踏まえてサイズを検討すると安心です。

施工方法の選択肢
竹フローリングは主に以下の施工方法が採用されています。それぞれの施工法は用途や下地条件によって使い分けます。

接着工法
下地に強度がある場合、全面に接着剤を塗布して固定する方法。床鳴りが起きにくく、竹材の寸法安定性を最大限に生かせます。

釘打ち工法
根太組下地に適した方法で、床材をしっかり固定できます。無垢タイプの竹フローリングでは多く採用されます。

置き敷き(フローティング)工法
エンジニアード竹フローリングやクリックシステムの製品でよく使われます。施工が早く、リフォームにも向いています。

施工現場では湿度管理が大切です。竹材は安定性が高いものの、搬入後の馴染ませ期間を確保することで、仕上がり後のトラブルを減らすことができます。

メンテナンスの基本
竹フローリングの美しさを保つためには、日常的な手入れが欠かせません。難しい作業は必要なく、ポイントを押さえれば長期にわたり質感を維持できます。

ホコリや砂の除去
細かい砂粒は表面を徐々に摩耗させます。モップや掃除機を使い、床面の乾いた汚れを日常的に取り除くと滑らかな状態が長持ちします。

水拭きは控えめに
水が残ったまま放置すると、仕上げ層に影響することがあります。固く絞った布で軽く拭く程度が適しています。

家具脚の保護
フェルトパッドやキャップを用いることで、引きずり傷の発生を抑えられます。パッドの硬化には気付きにくいため、定期的に点検すると理想的です。

表面仕上げに合わせたケア
・ウレタン仕上げ:市販のフロアポリッシュで光沢調整
・オイル仕上げ:専用オイルを薄く塗布して保護膜を補強

仕上げが異なると適したケアが変わるため、購入時の情報を確認しておくと安心です。

竹フローリングの製造工程
製造現場では、竹材がフローリングとして完成するまでに多くの工程を経ます。素材の癖を理解し、安定した品質を作り上げるための技術が詰まっています。

伐採・選別
3〜5年程度の成熟した竹を伐採し、密度の均一な部分を選別します。繊維の方向や外皮の状態などを確認し、加工に適した素材を見極めます。

スリット加工・煮沸処理
竹を細く割り、糖分や油分を取り除くための処理を行います。この工程は竹材の安定性を左右する重要な段階です。

乾燥
含水率を均一にするための乾燥工程は、品質の根幹とも言えます。適切な含水率まで落とすことで、曲がりや割れを防ぎます。

プレス成形・接着
横積み・縦積み・ストランドなどの構造に合わせ、高圧プレスで成形します。接着剤は耐久性と環境性を両立したものを使い、層間強度を確保します。

仕上げ加工
サンディング、面取り、塗装などを行い、最終的な滑らかさと色調を整えます。ウレタン塗装、UV塗装、オイル仕上げなど、用途に応じた仕上げが施されます。

こうして完成した竹フローリングは、素材特有の安定性と堅牢性を併せ持ち、日常生活の中で長く使える床材として仕上がります。

竹材が持つ魅力と応用性
竹は軽量でありながら高い強度を持ち、繊維が縦に揃う構造から反りが起きにくい素材です。加工性が良いため、フローリング以外にも壁材、家具材、階段部材など幅広く利用されています。製造現場では竹の繊維構造を理解したうえで圧縮技術や積層技術を活用し、用途に応じた製品開発が行われています。

また、竹材の均一な繊維構造は、ロングサイズやワイド幅の加工でも寸法安定性を維持しやすいという利点があります。これにより、大きな空間でも継ぎ目が目立ちにくく、自然で落ち着いた空気感を作り出せます。

竹フローリングを選ぶ際の視点
用途、環境、デザインの好み、下地の状況など、いくつかの要素を踏まえて選ぶと理想に近づきます。

・強度重視ならストランドウーブン
・自然な節の表情を求めるなら横積み
・シンプルな木肌に近い見た目なら縦積み
・床暖房を使うならエンジニアードタイプ

製造側としては、それぞれの構造に適した加工や含水率管理を行うことで、ユーザー側での扱いやすさにつながると感じています。